不動産売買といえば、宅地建物取引業法や民法などが関係することはよく知られています。
では、「消費者契約法」も不動産売買に関係することをご存じでしょうか?
例えば、不動産会社ではない一般の法人が所有する中古住宅を、個人が自分で住むために購入するケースです。
「不動産会社ではない普通の会社が売主なのだから、消費者契約法は関係ないのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、消費者契約法では、法人であれば不動産会社でなくても「事業者」に該当します。
そのため、法人と個人の間で締結する不動産売買契約も、条件によっては消費者契約法の対象となります。
この記事では、一般の法人が所有する不動産を個人に売却するケースを中心に、消費者契約法が不動産売買にどう関係するのかを解説します。
消費者契約法は、消費者と事業者との間にある情報量や交渉力などの格差を考慮し、消費者を守るための法律です。
事業者による不当な勧誘によって契約した場合に、一定の条件のもとで契約を取り消せるほか、
消費者の利益を一方的に害する一定の契約条項を無効とするルールなどが定められています。
日用品やサービスだけでなく、不動産売買も条件を満たせば対象になります。
消費者契約法では、基本的に次のように区別されます。
事業者……法人その他の団体、または事業として・事業のために契約する個人
消費者……事業者以外の個人
ここで重要なのは、不動産会社でなくても法人は「事業者」に該当するという点です。
例えば、製造業を営む会社が所有していた社宅を個人に売却する場合、
その会社が普段から不動産販売をしていなくても、売主は「事業者」となります。
一方、買主が個人だからといって、必ず「消費者」になるわけではありません。
購入した不動産を賃貸するなど、事業のために契約する場合には、消費者に該当しない可能性があります。
つまり、消費者契約法が適用されるかどうかは、「誰が契約するのか」だけでなく「何のために購入するのか」も重要です。
例えば、一般の法人が所有している中古戸建てを、個人が自分や家族の居住用として購入するとします。
この場合、
法人=事業者
個人=消費者
という関係になる可能性があります。
売主が不動産会社である必要はありません。
会社が所有していた社宅や社員寮、事業用不動産などを個人に売却する場合でも、
消費者契約法との関係が問題になることがあります。
そのため、
「うちは不動産会社ではないから、消費者契約法は関係ない」
とは一概にいえません。
では、個人が自分で住むのではなく、購入した不動産を賃貸するなど、投資目的で購入した場合はどうでしょうか。
個人であっても、事業のために契約する場合には、消費者ではなく「事業者」として扱われる可能性があります。
例えば、
自宅として購入 → 消費者に該当する可能性がある
賃貸経営など事業のために購入 → 消費者に該当しない可能性がある
という違いがあります。
ただし、投資目的だから必ず消費者ではないと決まっているわけではなく、実際には契約の目的や内容などを踏まえて判断されます。
消費者契約法では、事業者による一定の不当な勧誘によって契約した場合、契約を取り消せる制度があります。
例えば、法人が中古住宅を売却する際、買主の判断に重要な事項について事実と異なる説明をし、
それを信じて買主が契約したケースなどです。
ただし、購入後に不具合が見つかったからといって、必ず契約を取り消せるわけではありません。
「契約の取消し」に当たるのか、「契約不適合責任」の問題なのかは分けて考える必要があります。
消費者契約法では、契約の取消しだけでなく、消費者の利益を一方的に害する一定の契約条項を無効とするルールもあります。
不動産売買で特に注意したいのが、契約不適合責任などの免責条項です。
中古住宅では、
・現状有姿で引き渡す
・設備を保証しない
・契約不適合責任を免責する
などの特約が設けられることがあります。
こうした特約がすべて認められないわけではありません。
しかし、法人が売主、個人が消費者となる取引では、
免責の内容によっては消費者契約法との関係が問題になることがあります。
例えば、
「どのような不具合があっても売主は一切責任を負わない」
というような包括的な免責を設ける場合には注意が必要です。
中古住宅だからといって、「契約書に免責と書いておけば何でも大丈夫」というわけではありません。
売主が把握している重要な不具合などについては、適切に説明したうえで、
売主がどこまで責任を負うのかを契約書で明確にすることが大切です。
では、一般の法人が所有する不動産を、不動産会社が買い取る場合はどうでしょうか。
例えば、
売主:一般の法人
買主:不動産会社
という取引です。
この場合、買主である不動産会社は「消費者」ではありません。
そのため、法人と不動産会社との取引は、消費者契約法による消費者保護の対象とはなりません。
売主である法人と不動産会社との合意によって、契約不適合責任を免責する特約を設けることも可能です。
例えば、中古住宅や古い建物を不動産会社が買い取る場合、
「契約不適合責任は免責とする」
という条件で契約することがあります。
不動産会社は、買い取った物件をリフォームしたり、建物を解体したりして再販売することもあるため、
物件の状態を踏まえて売主と買主がリスクを分担する契約を結ぶことができます。
ただし、「不動産会社が買主なら何でも免責できる」という意味ではありません。
売主が知っている重要な事実を故意に告げなかった場合など、
免責特約があっても責任が問題となるケースがあります。
では、売主が法人ではなく個人だった場合はどうでしょうか。
例えば、個人が所有している中古住宅を、別の個人へ売却するケースです。
この場合、通常は「事業者と消費者との契約」には当たらないため、消費者契約法の適用は基本的に問題になりません。
法人 → 個人 :条件によって消費者契約法の対象になる
法人 → 不動産会社 :消費者契約法の対象となる「消費者」がいない
という違いがあります。
この違いは、契約不適合責任の免責など、売却条件を検討するうえでも重要です。
法人が所有する不動産を売却する場合、特に次の3点に注意しましょう。
① 買主が「消費者」に該当するか確認する
買主が個人であっても、必ず消費者になるわけではありません。
自宅として購入するのか、事業目的で購入するのかなど、契約の目的を確認することが重要です。
② 物件の状態を正確に説明する
雨漏りや漏水、設備の不具合など、売主が把握している重要な事項については、適切に説明しましょう。
「中古だから仕方がない」として説明を省略するのではなく、
買主が判断するために必要な情報を伝えることがトラブル防止につながります。
③ 免責条項を安易に設定しない
「現状有姿」「契約不適合責任免責」などの特約を設ける場合には、どこまで免責できるのかを確認する必要があります。
特に、法人が個人の消費者に売却する場合には、消費者契約法との関係にも注意が必要です。
ここまで、法人が所有する不動産を個人へ売却する場合と、不動産会社が買い取る場合の違いについて説明しました。
実際に、当社でも法人が所有する築古戸建てを買い取った事例があります。
八尾市・法人所有の築古戸建て
物件種別: 中古一戸建て(5DK)
エリア: 八尾市内
築年数: 約40年
駐車場: なし
売主: 法人
売却理由: 社宅として使用していたが、老朽化により長期間使用していなかった
物件の状態: 雨漏り跡あり
買取価格: 620万円
こちらは、法人が社宅として所有していた一戸建てです。
築年数は約40年と古く、駐車場もありませんでした。
また、長期間使用されていなかったため、建物には雨漏り跡も見られる状態でした。
一般の個人が購入する場合には、建物の状態や修繕費用などを詳しく確認する必要がある物件です。
また、契約不適合責任の範囲がどこまでなのか、を慎重に判断する必要があります。
当社では現地の状態を確認したうえで、620万円で買い取りました。
当社では、買い取った後に建物をそのまま利用するのではなく、建物を解体し、売土地として販売することにしました。
このように、不動産会社による買取では、築年数が古い、雨漏り跡がある、長期間空き家になっているといった物件でも、
建物の状態や土地の価値などを総合的に判断して買い取ることがあります。
法人が所有する不動産の場合、
「社員が使用していたので、設備の状態を把握していない」
「長期間使っていないので、建物の状態が心配」
「売却後の契約不適合責任が気になる」
といった悩みを抱えているケースもあります。
そういった場合は売却方法の一つとして、消費者契約法が適用されない不動産会社による買取をお考えください。
消費者契約法は、日常生活の商品やサービスだけに関係する法律ではありません。
法人が売主、個人が買主となる不動産売買でも、消費者契約法が関係する場合があります。
特に、下記の点を押さえておきましょう。
・法人であれば、不動産会社でなくても「事業者」に該当する
・個人でも、事業目的で購入する場合は「消費者」に該当しない可能性がある
・不当な勧誘によって契約した場合、取消しが問題になることがある
・消費者の利益を一方的に害する一定の契約条項は無効となる場合がある
・法人が個人に売却する場合、契約不適合責任の免責には注意が必要
・不動産会社に買い取ってもらう場合は、消費者契約法とは異なる考え方で契約条件を設定できる
法人所有の不動産を売却する場合、誰に売るのかによって契約上の注意点も変わります。
個人の買主に売却するだけでなく、不動産会社による買取を利用することも選択肢の一つです。
なお、消費者契約法が適用されるかどうかや、具体的な免責条項が有効かどうかは、
契約内容や個別の事情によって判断が異なります。
実際の契約について判断する場合は、必要に応じて弁護士などの専門家に確認することをおすすめします。